当院では外科的処置の際に痛みが少ない mectron社のピエゾサージェリー (Piezorgery) を導入しました。
ピエゾサージェリーは、トマソ・ベルセロッティ教授によって開発研究された、三次元超音波振動を利用した超音波骨切除器具で、骨を低侵襲に切除する方法です。超音波ボーンサージェリーで超音波によって骨だけを選択的かつ正確に切除することが出来ます。そのため、軟組織へのダメージが少なく、安全性の高い低侵襲手術が可能になります。のこぎりのように摩擦する器具と違い、骨の火傷を引き起こさないためダメージが少なく、他の器具と比較して術後の痛みや腫れを抑えることができ、傷の治りも早くなります。
ピエゾサージェリーは、硬組織のみを切除し柔組織を損傷させにくいという特徴があります。口腔内の粘膜、神経、血管を傷つけてしまうことで痛みを伴いますが、硬いものだけを削り、柔らかいものにはなんの影響もないため痛みを軽減できます。
< ピエゾサージェリーのメリット >
①超音波の力で骨を削るため、痛みや不快感が少なく、迅速かつ効果的に術部をカットできる。
②薄い骨でも破損することなく、高い精度の骨切りが可能である。
③血管、神経あるいは粘膜など軟組織の損傷が少ない。
④超音波振動は粘膜や血管、神経などを傷つけにくく、巻き込まない。
⑤骨に接触する時間が短いため、火傷・熱傷の危険性を少なくし、組織学的に良好な術後経過が得られる。
⑥出血による術部視野の妨げを防止できる。
⑦抜歯の場合には最小限の処置で抜歯できるため、手術時間が短くなる。
< ピエゾサージェリーのデメリット >
①日本では厚生労働省の認可に時間がかかり、
様々なピエゾサージェリー用の器具が開発されても市場に出るまで時間がかかる。
②価格が高価で、保険が適用されず治療費が保険対象外になる可能性がある。
*ピエゾサージェリーはどのような処置に使用するのか?*
当院では口腔領域のみでの使用になりますが、本来は骨手術の幅広い用途に使用できます。
< 主な適応分野 >
・顎顔面手術
・頭蓋顔面手術
・耳鼻咽喉手術
・手足手術
・再建外科手術
60種類以上の豊富なインサートチップがあり(骨切除用、仕上げ用、骨形成術用、穿孔用など)、使用目的によって使い分けることが出来ます。
①インプラントを埋入するとき(サイナスリフト、スプリットクレスト、骨採取)
②親知らずなどの抜歯、埋伏歯やアンキローシスを起こした歯根の撤去
③顎骨嚢胞、歯性上顎洞炎における歯根端切除
④骨の切削(骨造成、骨移植するとき)、下顎隆起除去術、顎変形症など
⑤外科矯正(オステオトミー/コルチコトミー)
⑥歯周病治療歯周ポケットを清掃するとき(ルートプレーニング/デブライドメントなどの除去)
⑦歯内療法(根幹形成、洗浄、フィリング、逆根幹窩洞形成など)
⑧歯冠修復と補綴(歯頚部マージン仕上げ、窩洞形成、補綴物の除去など)
< 科学的研究 >
図1:ドリルを使用した骨切除での炎症性細胞はピエゾサージェリーを使用したサンプルに比べ、多く見られる。
図2:ピエゾサージェリーテクニックを使用した切除部位では骨芽細胞が活発に働いている。
これらの研究からピエゾサージェリーの使用は、従来の方法と比較して低侵襲治療で、患者様の体に優しく、ダメージが少ない治療と思われます。
< 組織学的な分析 >
インサートチップの微細な振動により従来のドリルやマイクロオシレーションソーと比較して、非常に精密で軟組織の損傷を大幅に抑えた切削を行います。